/ 地域医療連携室だより
脳神経内科長鈴木 洋司
まだ、かえるの大合唱は聞こえてきませんが、すぐに蝉しぐれに変わり、気がつくとオリオン座を見上げながら帰途につく様子が目に浮かびます。
志太榛原地区で活躍されている先生方には、脳卒中やてんかんをはじめとして、神経領域のさまざまな問題について当院にご相談をいただき、ありがとうございます。
また神経難病の方の健康管理やトラブルについて対処していただいており、感謝しております。
今回はレカネマブをどのように使用していくかというお話しです。釈迦に説法となりますがお付き合いください。アルツハイマー型認知症は、緩徐に脳全体の障害を来して、記憶のみならず、運動機能や嚥下機能も障害していきます。幅はありますが平均10年くらいの経過で亡くなる病気です(up to dateより)。
レカネマブは、分子標的薬で抗体によってアミロイドβのプロトフィブリルを補足しグリア細胞にて除去するというメカニズムです。臨床試験では、対象は50~90歳の軽度認知障害と早期アルツハイマー型認知症でした。軽度認知障害はご本人やご家族に認知機能の低下の自覚があるが日常生活が問題なく送れている状態を言います。また、ここで言う早期はMMSE22点以上が目安になります。
アミロイドPETや髄液検査でアミロイドβの蓄積が証明できると投薬を行うことができます。1年半の投与により、アミロイドPETでは陽性と判断される基準を下回るくらいにかなり除去されました。症状については悪化を27%抑制し、グラフからは偽薬と比較して5.3ヶ月進行を遅らせた事になります。この結果から効果が少ないのではないかという意見もあり、ネット上や権威のある医学雑誌で繰り返し議論されています。
またアミロイド関連画像異常(ARIA)が生じ、脳微小出血が13.6%、脳出血が0.4%、脳表ヘモジデリン沈着が5.2%、脳浮腫が12.6%に見られました。ただし、症状を伴うことは少なく、出血では1.4%が症候性で、浮腫は2.8%が症候性でした。これは脳実質に沈着しているアミロイドβを除去する際に、可溶性となったアミロイドβによる免疫反応が血管壁を障害し、続発する一過性の血漿、血球成分の漏出をきたすことが原因と推測されています(Brain,146:4414–4424, 2023.)。ARIAは92%が投与開始後6ヶ月以内に生じています。
従いまして投与開始後2ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後を目安にMRI検査を行い、ARIAが生じますと程度によっては薬剤の投与をしばらく延期するなど細かくその対応が決められています。当科の方針としましては、世界的なブレイクスルーであるこの薬剤を、定められた方法に従って、適応をしっかり見極めて使用する方針です。十分な検査と説明と同意が必要な薬剤でありますので、導入までに時間と多職種の関わりを必要としています。脳神経内科スタッフ一同はその関わりにやりがいがあると感じております。適宜改善して参りますので、ご指導をよろしくお願いします。
投薬開始から半年後以降は施設要件を満たす病院で、この薬剤の投薬が可能となりますので、その際はご加療をよろしくお願いします。また1年半で治療は終了する見込みです。この薬剤を投与しても進行が停止するわけではなく、福祉の方々と一緒に地域で患者さんやご家族を支えていただくことは、今後も変わりありませんので、引き続き診療をよろしくお願いします。
さらにドナネマブという同じ仲間の薬剤が投薬可能になると言われています。またレカネマブを認知障害が出る前に開始する臨床試験、抗タウ抗体、神経炎症を抑える薬剤、ミトコンドリア機能を改善する薬剤、神経再生治療など、アルツハイマー型認知症ではこの薬剤を皮切りに次々と新しい治療が可能となることが期待されています。その都度医療の進歩を先生方と共有させていただきたいと希望しております。今後ともよろしくお願いします。
アルツハイマー外来の受診についてお知らせします。
第1・3・5週の金曜日 9:30
3の様式はホームページからダウンロード可能です。 FAXにて当院の地域医療連携室に送信していただき、予約をお取りください。 (FAX:054-623-9424 受付時間 8:30~17:00)
日時 | 令和6年6月27日(木)14:00~15:30 |
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場所 | 焼津文化会館 小ホール |
内容 | 「正しい認知症の理解と予防~新しい治療薬の登場~」
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参加方法 | 事前申し込み不要です |
日時 | 令和6年6月27日 (木) 13:15~16:45 |
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場所 | 焼津市立総合病院 クリニカルスキルラボ室 |
研修名 | フィジカルアセスメント研修 入門編 |
講師 | スキルラボ指導者、新人研修委員 |
参加方法 | 研修実施日の2週間前までにお申し込みください |
5月から整形外科外来は、紹介状と予約が必要となっております。
必ず予約をしてからの受診をお願いします。
今まで「予約推奨」としておりましたが、予約外で直接来院の患者が多くなり、予約患者の対応が円滑に行なわれず、ご迷惑をおかけする事態になっていました。
受診する場合は、紹介状が必要であり、予約も必要とさせていただきます。
紹介していただく医療機関様には、お手数をおかけしますが、ご理解、ご協力をお願い致します。
予約の方法は、医療機関様からのFAXによる受診申込のほかに、紹介状を手元に持った患者からの、電話による受診予約申し込みも可能です。
(TEL:054-623-3111 受付時間 13:00~17:00)
医師の異動がありましたのでお知らせいたします。