地域医療連携室だより |
地域医療連携室だより 2022年8月号 VOL.40多発性のう胞腎専門外来の開設にあたって 腎臓内科 科長 大浦 正晴
透析看護認定看護師としての活動 ~腎臓を守ることへの関わり~
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慢性腎臓病(CKD)は末期腎不全や心血管疾患のリスク因子で、国民の健康を脅かしています。患者数は年々増加しており、日本では成人人口の約13%、1,330万人に推計され、国民の8人に1人がCKD患者と言われています。CKD発症の背景因子としては様々な原因があり、慢性腎炎症候群(免疫の異常などが原因で起こる慢性的な腎臓の炎症)のほか、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が挙げられ、特に高齢者ではCKD有病率が高く、当院でも高齢者の透析治療導入が急増しております。CKDの多くは自覚症状が乏しいですが、血液・尿検査で診断が可能なため早期に診断し、適切な治療を行うことが重要で、CKDの重症化を防ぎ、透析移行や心血管疾患の予防につながります。CKDの原因は様々ですが、GFR値と尿蛋白量で重症度を分類する理由は、原因が異なっても腎臓の働きが低下する仕組は共通であることが明らかとなってきているからです。 私は看護師になり27年目、CKDに関連する部署で長年働いています。透析看護から腎不全看護へ幅は広がり、透析看護という名称ですが、腎不全全般へ支援、具体的には、CKD 保存期からCKD 末期患者を対象とし、予防から維持・腎代替療法選択・導入・維持・末期と幅広く支援を行っております。 当院では、CKDにより一生涯を通じた療養生活が必要となった方には、どのような生活をしていくのか、腎臓の代わりとなる治療(透析・腎移植)を含めたお話を腎代替療法選択指導として予約制で外来を行っています。患者様自身が今後を見据えた意思決定や、適切なセルフケアが行えるように、ご家族を含めて支援をしています。日々感じることは、CKDはかなり進行するまで自覚症状が現れにくいため、適切な治療を受けずに放置する方が多くいるということです。その結果、気がつかないうちに末期腎不全に進み、症状が出たときには状態がかなり悪くなり、日常生活や食事の管理、内服による治療だけでは難しくなってしまいます。挙げ句の果てには透析をすぐ開始しなくてはいけなくなり、また動脈硬化を進め心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくなってしまいます。気づいた時には手遅れということが少なくありません。そのような状況では理解は深まらず、受容できないままの患者様も少なくありません。CKDは「適切な治療を継続的に受けること」「腎臓を守る生活によって、病気の進行を遅らせ、合併症の発症を予防できる」ということです。 |
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【CKDの重症度分類】 かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準 エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン2018より |
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しかし、腎臓を守れなかったから終わりではありません。定期的な受診で病期のステージに合わせた治療により、病気の進行を遅らせることも大切となります。そのため、かかりつけ医と腎臓専門医・専門医療機関が連携してCKD患者を診療することが重要であると考えます。 腎臓内科外来では、慢性疾患ゆえの悩みや思いを受け止め、病期に合わせて療養の方法を患者様と一緒に考えていきたいと思い、お話させていただいています。この機会が、みなさまの関わる患者様への介入に役立つように切に願っております。ご相談ください。 |
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。当院では認知症高齢者日常生活自立度Ⅲ以上の方を認知症ケア加算対象者とし、認知症ケア加算Ⅰをとっています。加算対象者の画像評価を行っていますが、アルツハイマー型認知症が多く、次に血管性認知症、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の混合型が多く見られます。また、嗜銀顆粒性認知症や神経原線維変化型老年期認知症を疑う画像もあり、血管性認知症の中には、多発梗塞性認知症や脳小脳血管病変などの動脈硬化や高血圧などに関連するものも多くみられます。生活習慣病による血管の老化に伴う認知症が多いので、適度な運動、バランスの良い食事、夜間の良好な睡眠、余暇活動を楽しむことを生活習慣に取り入れ、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病を治療することが重要です。 年を取れば取るほど認知症になりやすくなりますが、当院の認知症ケア加算対象者(令和3年度)737名においては、年齢別では、75歳以下は8.0%と少なく、80才以上が78.1%を占め、90歳以上が30%でした。要介護2以上が対象者ということもあり、その多くの方が施設入所や介護サービスなどを利用しており、疾患名は肺炎が最も多く、骨折、尿路感染症などの身体的なフレイルも含めた疾患、心不全や脳梗塞、消化管疾患など入退院を繰り返している人も多いのが現状です。また、病院の平均在院日数が11.6日に対し、認知症ケア加算対象者は25.2日と長く、治療に時間を要する原因として、せん妄などが起きやすく効果的に治療が受けられない、廃用やADL低下を来しやすい、退院先の選定や退院調整等にも時間がかかることなどがあげられます。 |
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【認知症ケアサポートチームについて】 当院では認知症ケアサポートチーム(DST)として、脳神経内科医師、認知症看護認定看護師、社会福祉士、作業療法士、薬剤師、看護部認知症ケア委員会看護師長が、身体疾患のために入院した認知症患者を適切に受け入れ、病棟における対応力とケアの質の向上にむけて活動しています。BPSDやせん妄などが見られる場合には、その要因をアセスメントし、症状の軽減を図るための適切な環境調整や患者とのコミュニケーションの方法等について、画像の評価や認知機能の評価、ケアの評価、身体拘束解除に向けたケア、入院時からの退院支援について取り組み、廃用予防や離床を促し生活リズムを整えるためのリハビリ等、薬剤の適正な使用についてなどを検討しています。 |
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【認知症ケアで大切にしていること】 1.認知症ケアの基本 1)行動の意味を考える 2)「人」として向き合うこと 3)敬意を払って接する 4)ありのままを受け入れる姿勢を持つ 5)環境を整える 個人的にはその人の気持ちを考えて、困りごとを解決するように、優しく笑顔でゆっくり、はっきりと声をかけるようにしています。 2.パーソンセンタードケア パーソンセンタードケアとは、「認知症の方を一人の人間として尊重してケアしていく」という考えのもとで行う認知症ケアのことです。認知症を理解して、認知症の方の行動にも意味がある、認知症の人の立場に立って考え、心理的なニーズは何かをスタッフに言語化して伝え、ケアに活かしていただけるように助言しています。 |
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3.せん妄ケア 認知症の方は脳機能が脆弱なためせん妄を起こしやすいです。せん妄は発症すると予後が悪くなる、治療が効果的に受けられない、または入院継続が出来ない、対処が難しく薬剤使用をするため廃用を起こしやすいという状況になるため、予防が大切になってきます。当院ではせん妄スクリーニングを実施し、ハイリスク患者に対しては、見当識の支援、不安や混乱を避けるようなわかりやすい説明、脱水予防、疼痛や不快の緩和や早期離床、夜間の不眠へのケアや生活リズムを整えるケア、薬剤の適正な使用がされるようにせん妄予防にも努めています。薬剤に関してですが、ベンゾジアゼピン系の薬剤は、認知機能を低下させる可能性もあり、転倒のリスクとなりやすいため、長期常用(6ヶ月以上)の場合、変更が難しいですが、なるべく漸減や他の薬剤への変更などを行っています。 認知症に早期に気づき、対応することは、適切な医療や介護サービス・福祉サービスへのつなぎとなります。また、本人や家族の不安・混乱・戸惑いの期間を短くすることにも大いに有効です。(厚生労働省ホームページより引用) |
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【おわりに】 現状では認知症ケアに関しては院内での活動のみとしており、焼津市の病院や施設などには看看連携を通して講義などをさせていただいています。認知症については早期からの退院後の認知症の方々が住み慣れた地域で早く過ごせるよう入院中に認知機能の低下やADLの低下、廃用がなるべくないよう努力してまいりますので今後ともご指導、ご協力をよろしくお願いいたします。 |
6月30日 退職医師 形成外科 鈴木 大介 産婦人科 植竹 七海
『より良い医療の提供を行うとともに、市民の健康増進に貢献することで、市民の信頼に応えます。』 |
【お願い】 当院へのご紹介患者様に紹介状をお渡しいただくときは、「新型コロナウイルス感染症関連チェックシート」2022.6.30版を来院当日持参するよう、お伝えください。 |