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地域医療連携室だより 2023年3月号 VOL.42
消化器外科について 消化器外科 科長 高林 直記
近年では消化器外科領域では腹腔鏡下手術が普及しており、日本内視鏡外科学会のアンケート調査では2021年の1年間に124,614例が施行されています。当科でも鏡視下手術の占める割合は多くなってきています。また、2018年からはロボット支援下手術の保険適応拡大により、胃癌、食道癌、直腸癌などが保険適応になりました。これに伴い多くの施設での導入、症例の増加が見られるようになりました。
当院ではすでにda Vinci (ダ ヴィンチ)Xiが導入され、泌尿器科、婦人科がロボット支援下手術を先行させています。当科でもこの4月より現職埼玉県立がんセンター外科副部長で、特に直腸癌においてロボット手術、腹腔鏡手術とも経験豊富な医師を常勤医として迎えることとなりました。以前にも当科に勤務しており、これまでもたびたび腹腔鏡手術の指導に来ていただきました。赴任後早々にも直腸癌の切除術に対するロボット支援下手術を導入すべく、現在準備を進めております。
今後ますます増えるであろう大腸癌患者さんの治療をさらに充実させ、皆様のご期待に応えていきたいと思います。
2023年になってもいまだに新型コロナ禍が続いています。新型コロナウイルス感染症第8波の影響で当院でも患者・スタッフ感染者が急増しました。そのため複数の病棟で入院制限が行われる事態となり、外科としてもその対応に苦慮いたしました。前回第7波の時にはピーク時でも病棟単位で感染者数は2桁になることはなかったと記憶していますが、それでも入院制限が行われました。前回よりも感染者数が増加しましたが、感染管理室・病棟スタッフ等各職員が一丸となって尽力することにより、何とか緊急入院の受け入れをし、また必要度の高い患者さんは可及的早くに入院させるなど努めてまいりました。
新型コロナウイルス感染症が流行し始めた2020年以降と、それ以前の3年間の手術症例数(表1)を示しました。外科全体、消化器・一般外科領域とも新型コロナ禍以降で症例数が減少しています。症例数が最も多かった年を100%として各年間の率を見ると、特に2022年では外科全体で8割弱まで、消化器・一般外科領域で9割弱まで減少していました。
一方緊急手術症例では、2018年が特殊だったと考えられ、大体同水準で推移していると思われました。
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(表1)
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また、術式別(表2)にみると、悪性腫瘍手術では概ね同水準で推移しています。胆石症や鼠径ヘルニアなど良性疾患の手術は減少傾向にあります。ただし、緊急の胆嚢摘出術はあまり変わりませんでした。(鼠径ヘルニアは2017年が特殊でそれ以前は130例前後で推移しています。)
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(表2)
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癌根治術、緊急症例など優先度の高いものは制限することなく施行するなど、合理的な対処ができたと考えております。
今後新型コロナウイルス感染症は2類から5類への見直しが決定されました。これにより感染の広がりがどうなるかなど医療現場への影響はまだまだ不確かな点も多いかと考えられます。そのような中でも当科といたしましては感染対策に留意しつつ治療に努めてまいりたいと思います。
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新しいCT装置と被ばく低減技術 中央放射線科 岩倉 圭佑
日頃より、画像診断を利用していただきありがとうございます。昨年度の利用は、令和2年度と同様に約1000件で、ピーク時より300件ほどの減少が続いております。今年度も同様の傾向にあります。現在CT装置が2台、MRI装置が3台稼動しており、予約待ち期間も短くなっています。是非、ご利用頂けたらと思います。
昨年9月末にCT装置の更新により、Canon社製の新型CT装置『Aquilion Serve』(アクイリオン サーブ)が導入されました。ミドルスペックの装置ではありますが、新しいコンセプトの装置であり、多くの新しい技術が搭載されています。今回は、その中でも被ばく低減に関わる技術と患者さんに関わる特徴をご紹介します。
一般に、1年間に受けた放射線被ばく線量が100 mSv(ミリシーベルト)未満であれば、CT検査を受けた人も受けなかった人も、「発癌率」や「遺伝的な影響」の差はないと言われています。通常のCT検査では、1回当たりの被ばく線量が100 mSvよりも大幅に少ないため被ばくによる影響はほとんどないといえます。とはいえ、胸部X線撮影のように線量が少ない検査(0.06mSv程度)に比べると、X線CT検査の方が線量は多くなります(胸部CT:6-8 mSv, 腹部CT:7-15 mSv)。そのため、CT検査の被ばく線量も画質が担保できる範囲で少なくした方が良いとされています。当院に導入されたAquilion Serveは、低被ばくで高画質を生み出す根幹技術が惜しみなく搭載されています。
まずは、X線を出力するX線管球と透過したX線を検出する検出器が旧装置より品質改良されました(新世代プラットフォームガントリ:PURE ViSION
Optics)。X線管球は患者さんのサイズと被ばく、さらに画質のバランスを考慮した最適なX線エネルギーを出力できる構造となりました。検出器は、精巧な極小切断(マイクロブレード)技術と検出器素材の最適化により、40%の出力向上と28%のノイズ低減の両立を実現できました。低被ばく撮影の実現はもちろんのこと、画像ノイズやアーチファクトのより少ない鮮明な画像を提供します。従来装置と比較し被ばく線量は4割程度減っています。
次は、ディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術(Advanced intelligent Clear-IQ Engine - integrated: AiCE-i)の紹介です。AiCE-iは、AI技術であるディープラーニングを用いて設計されたノイズ成分とシグナル成分を識別する処理で、分解能を維持したままノイズを選択的に除去する再構成技術です。ハイスペック装置の高品質なデータをディープコンボリューションニューラルネットワーク(DCNN)の学習に用い、装置が持つ分解能をより引き出しながら、高いノイズ低減効果を実現しました。AiCE-iを搭載することで、CT検査における被ばく線量の低減と高品質画像の提供に貢献します。
最後に、患者様に関わる特徴として、新たに設計したプラットフォームでCT装置の開口径が730mmから800mmの大開口径となりました。大開口径により高齢や病態によって動きが制限される患者さんにおいても、柔軟な検査環境が提供できます。また、ガントリに内蔵したCanon社製の2台のカメラ映像を基に、患者さんの体位を検出することで撮影開始位置を自動で算出し簡便に素早くポジショニングが行えます。ポジショニング時の患者さんとの接触時間が短縮され、感染症対策にも寄与するものと考えます。CT装置更新に伴い検査室内もキレイにリフォームされました。床は木目調、壁はグレーの塗り壁に一面のみ深い紺色となっています。病院とは思えないカフェのようなリラックスできる空間となっています。
検査の混み具合や進行状況によって、必ずしも全ての検査を新しいCT装置で行う訳ではありませんが、この機会に是非ご利用いただけたらと思います。
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新しいCT装置とCT室内の風景 |
FBP:ノイズ低減のない元々の再構成
AIDR:既存のノイズ低減再構成
AiCE:新しいノイズ低減再構成
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外来予約推奨について
当院の外来において、予約なしで受診可の診療科がありますが、その外来は混雑し、待ち時間も長くなりご迷惑をおかけしています。そのような状態を解消し、外来での診療時間の短縮と患者さんの待ち時間短縮のためにも、紹介状をお持ちの患者さんは、予約なしで直接来院ではなく、事前に電話で予約をとっていただきたく、紹介状を作成される照会元医院様から、患者さんへお伝えくださるようご協力をお願いいたします。
【予約方法】
〇予約用電話番号 054-623-3111(代表) 内線2159(地域医療連携室)
〇予約受付時間 午後1時~午後5時(この間に電話をしてください)
※受診する科によっては、外来で予約をお取りする場合もあります
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医師異動のお知らせ
日ごろからご支援、ご指導いただきありがとうございます。医師の異動がありましたのでお知らせいたします。
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【4月からの診療体制】
※前述の高林科長が記事の中でふれていましたが、埼玉県立がんセンター消化器外科から風間伸介医師が就任されます。
ダヴィンチによる大腸癌手術に対応するため、当院の手術対象患者の範囲が広がります。対象患者のご紹介をお願いします。
※今まで、非常勤医師のみであった麻酔科に、常勤医として浜松医大から朝羽瞳医師が就任されます。
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1月から眼科に非常勤ではありますが、静岡赤十字病院から松岡貴大医師を迎え、増員体制で診療を行っております。網膜・緑内障外来として、対象患者をご紹介ください。
-----発達障害・療育が必要と思われる小児・不安定なお子さんについて------
小児科医師10人の診療体制で対応しています。
体制が整っている当院小児科に、ご紹介ください。 |
【お願い】
当院へのご紹介患者様に紹介状をお渡しいただくときは、「新型コロナウイルス感染症関連チェックシート」2022.6.30版を来院当日持参するよう、お伝えください。
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