焼津市立総合病院

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医療関係の皆さまへ

地域医療連携室だより

地域医療連携室だより 2023年11月号 VOL.45

大腸癌の手術について                      外科・副病院長  風間 伸介

*はじめに
 近年、日本人の2人に1人は癌に罹患する時代となっています。
 がん研究振興財団のがんの統計2023によりますと、2022年部位別予測がん死亡率で、大腸癌は、男性では肺癌に次いで2位、女性では1位をしめる癌腫です。
 また、本邦における大腸癌の5年相対生存率は72.5%と消化器癌の中では最も高く、また観血的な原発巣の治癒切除例と非治癒切除例の比較ではそれぞれ87.1%と32.2%であり、大腸癌の治療には根治的な切除が重要とされています(康ら 日大医学雑誌 2022)。
 こうした背景から、大腸癌の手術において、術式や手術器材の面から、現在でも検討、開発が日々行われており、今回その大腸癌の手術について、術式、器材の発展の両面からお話しさせていただきたいと思います。

風間副病院長
*術式について
 大腸は、腹腔内を右下腹部から約270度めぐる長い臓器であり、栄養血管もその部位により上腸間膜動脈系と下腸間膜動脈系に分けられます。そのため、術式はその部位によりそれぞれ規定されてはいますが、大腸癌における術式の基本的な原則が決まっています。それは栄養血管を根部で結紮、切離することで原発巣の領域リンパ節を取り残しなく摘出し、また原発巣からの播種を防ぐために腸間膜を損傷することなく、en bloc(一塊でという意味)に摘出することです。
 この大腸癌における手術の大原則により、本邦の治療成績が良いわけですが、近年でも領域リンパ節のうち、特に主リンパ節言われる第3群リンパ節に対する郭清範囲の検討や、直腸癌における側方リンパ節郭清についての検討がなされ、日々進歩を遂げています。
 また、大腸癌の手術成績が比較的良好な本邦と比較して、欧米では長年成績が改善しなかったことから、本邦の手術原則にならい、中枢側高位結紮(CVL)と全結腸間膜切除(CME)と名付けた原則が取り入れられるようになりました。それによる手術成績の向上も報告されており、大腸癌手術は日本が世界をリードしているといえると思います。

*手術器材の変遷
 大腸癌の術式を完遂するのが、手術のやり方ということになりますが、このやり方はここ半世紀でダイナミックに変化してきました。やり方には、開発された時代順に、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術があります。
 開腹手術は従来行われてきたやり方で、術式により長さに長短はありますが、15-20cm程度の切開をおいて手術を行う方法です。手術を直視下で行うことができ、とっさに様々な状況に対応できることから、外科医にとっては安心感の高い方法といえます。また、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術という別の方法がある現在、決して廃れた方法というわけではなく、現在でも様々な状況下で行われる方法です。
 腹腔鏡下手術は、臍部に4-5cmの切開をおいて、おなかを膨らませる気腹装置を設置して、その他に3-4か所の1cm程度の切開をおいて鉗子を入れ、おなかの中をカメラで見ながら鉗子で手術操作を行う方法です。1991年に世界で初めて大腸腫瘍に対して行われ、それに遅れること2年後の1993年に本邦でも行われ、本邦での大腸癌に対する腹腔鏡下手術件数は2013年に20,000件を超え、2019年までに約37,000件行われています (日本内視鏡外科学会アンケート集計)。広く普及するまでに、開腹手術と腹腔鏡下手術の成績の比較検討がなされ、また開腹手術とは全く異なる技術の習得が必要であることから、本邦では日本内視鏡外科学会による技術認定制度があり、一定の技術の担保も行われながら施行されています。
 ロボット支援下手術は、手法は腹腔鏡下手術と同じですが、腹腔鏡下手術では鉗子を外科医が直に操作するのに対し、ロボット支援下手術では鉗子とその扱いを、ダヴィンチ手術システムを用いて行い、外科医はそのシステムを操作して手術を行うという点が異なります。大腸癌において、このロボット支援下手術は、まず2018年4月に直腸癌に対して保険適応となり、さらに結腸癌に対して2022年4月に保険適応となりました。
 ロボット支援下手術には、1.高画像3Dシステム、2.多関節機能付きインストゥルメント、3.手振れ防止機能、4.スケーリング機能などの優れた機能があり、大腸癌における手術の大原則を完遂するのに、より適した手法といえます。
 
*当院の大腸癌手術の実際
 当院では、直腸癌に対するロボット支援下手術を本年6月から、また結腸癌に対するロボット支援下手術を10月から開始いたしました。それにより当院では大腸癌の手術に関して、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術のいずれも施行可能となりました。この3つの手法の選択に関しましては、大腸癌の進行の程度、患者の既往歴、手術歴などから外科内で検討して、安全で最適な方法を提供できるよう努力しております。今後、大腸癌患者がいらっしゃいましたら、是非ご紹介いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
                       
ロボット支援下手術用機器

当院のNST活動について                   栄養サポート室  田村 大輔

そもそもNSTとは?
 Nutrition(栄養)Support(サポート)Team(チーム)の略です。
 当院では2004年からNST活動を実施しています。

NST回診はいつ、どこで、誰が どのように実施?
 週に1回、NST回診・カンファレンスを行います。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士(いずれも専任)が集まり、NST介入依頼のあった患者さんを順番にまわります。

NST回診の対象患者は?目的は?
 経口摂取不良が続いている患者、創傷治癒促進・褥瘡改善のために栄養強化の必要な患者、著明な体重減少がある患者、下痢改善など様々です。
 栄養補助食品や経腸栄養剤の選定、栄養点滴のメニュー提案など、個々の状態に合わせた提案を行います。
 主にNSTリンクナースと管理栄養士が共同してNST介入患者を抽出しますが、主治医から依頼をいただくこともあります。
 NST介入により患者さんのQOL改善や、早期退院を目指します!

当院NSTの特徴は?
 介入が多いのは外科、脳神経内科、脳神経外科、形成外科です。延べ件数としては、年間約500件のNST回診を実施しています。

NSTに関わるスタッフについて
 医師、看護師、薬剤師、管理栄養士の他に、歯科医師のNST回診同行、各病棟のNSTリンクナースの配置、NST委員会は臨床検査技師、言語聴覚士、歯科衛生士、事務職を含む多職種で構成しています。

NSTセミナー(勉強会)
 スキルアップのためのNSTセミナーを年に4回開催しており、院外の方も参加可能です。
 お気軽にご参加下さい!(詳細は裏面に記載)

~研修内容の例~
  栄養アセスメントの意義と実際(医師)
  NSTと検査(臨床検査技師)
  経腸栄養剤の種類と使用のポイント(薬剤師、管理栄養士)
  摂食嚥下障害の食事ケア(言語聴覚士)
  褥瘡と栄養(皮膚・排泄ケア認定看護師)
  当院の食事について 嚥下調整食・特別治療食(管理栄養士)
  年に一度は外部から講師を招いての栄養に関する講演
 NSTカンファレンスの様子

「血液浄化療法室」・「点滴・治療センター」拡充のお知らせ

 現在、当院では、「血液浄化療法室」と「点滴・治療センター」の機能拡充のため、A棟4階(旧:4A病棟)の改修工事を行っています。透析ベッド11床、点滴治療用ベッド10床を増設し、2024年2月からの運用開始を予定しています

研修会開催のお知らせ

◇他施設看護職員受入研修「褥瘡対策セミナー」
 日時:令和5年12月8日(金)9:00~16:30の都合の良い時間
 場所:焼津市立総合病院C棟3階講義室
 内容:DESIGN-R ®2020
 ※事前登録制ですので、ホームページ掲載の研修参加申込書に必要事項を
  記入し、研修実施日2週間前までに、FAXにてお申し込みください。
 申込先:地域医療連携室 FAX:054-623-9424
 褥瘡対策イメージ
講演会イメージ  ◇NSTセミナー(公開講座)
 日時:令和5年12月20日(水)17:30~18:45
 場所:焼津市立総合病院C棟3階講義室
 内容:排便ケアについて
 NPO法人日本コンチネンス協会 
 コンチネンスアドバイザー 種子田 美穂子 氏
 ※事前申込み不要

医師異動のお知らせ

  医師の異動がありましたのでお知らせいたします。
9月30日  退職医師                 
泌尿器科 大石 真之介
小児科 浅井 佑哉
整形外科 土田 智広
産婦人科 吉井 恵理佳
産婦人科 高井 理彩
10月1日  新任医師                
外科 佐藤 健資
外科 牧野 晃大
整形外科 新井 将功
小児科 北山 雅崇
産婦人科 河井 孝夫
   
11月1日  新任医師               
産婦人科 大西 由利香

       

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