眼科 松永 寛美
糖尿病網膜症とは、糖尿病によって細い網膜血管が詰ってしまい起こる病気です。
現在、日本では18歳以上の視覚障害の原因のトップに緑内障・糖尿病網膜症・網膜色素変性症が挙げられており、毎年3,000人以上の方が糖尿病網膜症で視力を失っているというデータ報告があります。
すぐに悪くなるわけではなく、おおまかには次のように段階をふんで進行します。
●単純網膜症
網膜に出血・毛細血管瘤が出現。自覚症状はなく、この段階では経過観察。
●増殖前網膜症
血管が詰り網膜に虚血が起こる。必要な病変部位にはレーザーを開始。
●増殖網膜症
虚血部位に新生血管が生えることで、硝子体出血・血管新生緑内障・網膜剥離を起こし、重篤な視力障害を起こす。
今回、専門的なことはさておき、とりあえず皆さんに知っておいていただきたいこととしては次のようなことがあります。
網膜症は徐々に進行しますが、かなり進行しないと自覚症状が現れにくいため、突然見えにくくなって眼科外来を受診したら硝子体出血・血管新生緑内障・網膜剥離で失明寸前ということもあります。
「仕事や子育てで忙しくてつい内科・眼科の受診が後回しになってしまって…」と思っていませんか?
実はこれが落とし穴です。
最初のうちは内科や眼科にかかっていても初期の段階では自覚症状に乏しいため、自己判断で受診を中止してほったらかしにしている間に病気は進行します。
そのうち上述のように失明寸前で緊急入院・レーザー・手術が必要になるほどひどくなるケースもあります。
働き盛りや子育ての最中で入院して治療するということは経済的にも精神的にもかなりのダメージとなります。
平均寿命を考えた場合、中途失明してしまいその後の長い人生生活に支障を来たしてしまうということを考えると、ちょっと大変でも定期受診を受けることで失明のリスクはかなり減るはずです。
また、人間ドックの眼底検査では後極という一部分しか見ないことがほとんどなため、網膜全体を診察するには散瞳しての眼底検査が必要となります。
ご自分のためにもご家族のためにも、内科だけでなく眼科の定期検査もきちんと受けてくださいね。 |