スタッフインタビュー

病院薬剤師は、チーム医療の一員として医療の質向上において重要な役割を担っています。
病棟における医師や看護師をはじめとする多職種との連携はもちろん、感染管理、緩和ケア、栄養管理などの専門分野チームにも参画し、薬物療法の専門家として活躍しています。

また、プロトコールに基づく薬物治療管理（PBPM）の活用により、医師と密接に連携しながら薬物治療を管理しています。
例えば、抗菌薬の適正使用支援や抗凝固療法の調整において、専門的知識を駆使して患者一人ひとりに最適な治療を提供しています。
この取り組みは、医療の安全性と治療効果の向上に寄与するとともに、医師の負担軽減にも貢献しています。

さらに、採用薬の選定や運用も病院薬剤師の重要な役割です。
当院では、安全で効果的な薬物治療を全院的に実現するため、フォーミュラリ（採用薬リスト）の作成と運用に取り組んでいます。
最新のエビデンスを反映し、医療の標準化と効率化を推進しています。

病院薬剤師は、薬物療法全般に関わる業務を通じて医療の質を支えるだけでなく、患者のQOL向上にも貢献しています。
薬物療法のプロフェッショナルとして信頼され、多職種チームの中で活躍できることに大きなやりがいを感じる職業です。

当院は病床数423床を有する焼津市唯一の公立急性期病院であり、その薬剤部門を22名の常勤薬剤師が支えています。
病院薬剤師の活躍の場を「薬局」ではなく「病棟」と位置づけ、病棟業務に専念できるよう配置を工夫しています。
当院の病棟業務は平成4年に開始され、近隣病院において先駆的な取り組みとして高く評価されてきました。
先代薬局長が掲げた「患者中心の医療の実践」という理念は、30年以上を経た現在も当院薬剤部の文化として受け継がれています。
長年の経験を活かし、質の高い薬剤師業務を提供しています。

また、当院には各種認定資格を取得した薬剤師が多数在籍しています。
がん治療、緩和ケア、感染制御、NST、小児、糖尿病、心不全などの分野で資格を有する薬剤師が、その専門性を活かして病棟業務や一部の外来患者に対し、薬物療法の質向上に貢献しています。
若手薬剤師もキャリアパスの一環として資格取得に積極的に取り組んでいます。

さらに、コロナ禍を通じて日本の医療分野におけるデジタル化の遅れが浮き彫りになりました。
その中で、当院は2024年11月に電子処方箋を導入しました。これは静岡県内の病院で3番目の早さであり、医療DX（デジタルトランスフォーメーション）の推進に向けた積極的な姿勢を示しています。
この取り組みは薬剤部のみならず病院全体の意欲の表れであり、先進的な病院として地域医療に貢献し続ける姿勢を象徴するものです。

日本の医療の持続可能性については、非常に懐疑的です。
超高齢化による医療需要の増加により医療費がさらに増大し、2022年には対GDP比で8.24%を占めています。
薬剤費も高額な医薬品が次々と承認されており、総額を抑えるのが困難になりつつあります。
薬剤費抑制のためには、効果が同等である薬剤において、より安価な薬を使用することが重要で、フォーミュラリの活用がその具体的な手段として有効です。
また、高価な抗腫瘍薬の使用を控え、ジェネリック医薬品やバイオシミラーといった安価な薬剤の使用を検討すべきだとの意見¹⁾もあります。
このような薬剤選択にも薬剤師は積極的に関与することが求められます。

さらに、令和4年度改訂の薬学教育モデルコアカリキュラムでは、疫学や人工知能、ビッグデータなどの技術を利活用する能力が求められています。
このスキルは今後の薬剤師にとって不可欠であり、医療分野のデジタル化を推進する役割を担うことが期待されています。当院では、病院のマスデータを活用し、データの抽出や前処理、分析、解釈を迅速に行える仕組みを構築することを目指しています。

最後に、医療従事者の不足、特に病院薬剤師の不足は喫緊の課題です。
対物業務の機械化や業務効率化、夜間勤務の二交代制の導入などを通じて、職員が働きやすい環境を提供し続けることも心掛けています。
¹⁾Jpn J Clin Oncol 2024;54:1059–1061, https://doi.org/10.1093/jjco/hyae131